その日の14時から、立川志の輔(たてかわ・しのすけ)師匠の独演会が開催されたのだ。
最近では、チケット入手が困難な噺家の代表格として、
志の輔師匠の弟弟子(おとうとでし)の談春師匠が謳われるが、
談春師匠の場合は、どうやらこの類の都市伝説を自ら言いはじめたらしい。売り出すために自分でコピーを考えて言いふらしたら、世間がまんまと引っかかった、というインタビューを観たことがある(談春師匠の照れ隠しの側面も多分にあるだろう。師匠の古典は確かにスゴイ)。
関係ないけど、主催者からすれば、チケットが売れる、ということは噺家に限らず、歌手、政治家、スポーツイベント、町内会のビンゴゲームなど規模の大小を問わず、とても嬉しいことだと容易に想像できる。
私の体験上、談春師匠のチケットより、志の輔師匠のチケットのほうが、まちがいなく取りにくい。シノスケ見たい、券売り切れ、見たい売り切れ、と何度か空振りを経験し、実は私にとって今回の富良野が初志の輔(はつしのすけ。まぎらわしくてスマン)。チケット問題だけでいえば、談志家元が没しても、立川流は、とても嬉しいことになっているに違いない。独立独歩の個別経営なんだろうけどさ。
会場は、富良野演劇工場、という俺にとっては未知の場所。
電話で問い合わせ、何となく土地勘がないなりにも方向の見当はついたが、どんな場内なのかHPの情報しか持ち合わせていない(全席自由、っていうのが、逆にいらぬ焦りを誘う)。それにしても、落語を聴きに富良野まで遠征をかけるなんて、私も随分エラくなったものだ。いい気にならぬよう自戒せねば。
結果からいうと、会場は適度にゆったりし、素晴らしかった。通常の肘掛のある椅子席ではなく、一列まるごと長椅子状になっており、圧迫感がない。イザコザもなく、前から3列目のほぼセンターに陣取る。高座とフラットな目線。多分、この会場ならベスポジだろう。
定刻となり、消灯。
やがて真っ暗の舞台に照明が灯り、いきなり紋付姿の師匠が登場。前座も出てこず、ここから2時間半、ノンストップ怒涛の志の輔ワールド。ガッテンの人じゃない、明らかな噺家の師匠。
芸の良し悪しは、私にはわからないのでいつものように書かない。
とにかく、心が揺り動かされた、とても贅沢な時間だった。おそるべし立川流!
0 件のコメント:
コメントを投稿