やはり、ラーメンが好きなのだ。
話は約一週間前にさかのぼる。仕事がらみの小さな旅で、オホーツク側の都市に出向いた際のことだ。
何度も書いたが、私がこの世で一番美味いと思っているラーメン屋さんは、札幌にある。ここで食べる味噌チャーシューとライス、激しいメタボメシだが、そんなことは一向にかまわない。これが私の至高の食事だ。
このラーメン屋さんで修行した方が、オホーツク地域の或る街で店をやっている。無論、寿司屋さんや天ぷら屋さんじゃない。ラーメン屋さんだ。当たり前か?
名店と謳われる札幌のその店の厨房で働いている人は何人も見てきたが、彼はその中でもテキパキとよく働き、秀でて熱心な若者だった。店主の右腕であり、店主不在のときにひとりで厨房を守っている姿に出くわしたこともあった。この店のファンは多いが、多分これは激レアな体験だろう。
彼は、何故か店主と顔つきが似ているところがあったので、私は心の中でジュニアさんと呼んでいた。札幌のその店には、あらかじめ◯◯日にオホーツク方面に行くので、お弟子さんの店に伺います、と伝えておいた。おかみさんも、忙しい中だったのに、じゃあ連絡しておきます、と朗らかに応じてくれた。どことなく嬉しそうだった。
で、当日。
ちょっとした山あいにある店に向かうと、ジュニアさんは私の顔を見るなり、お久しぶりでした、と明るく挨拶してくれた。私も、変わらずにお元気そうで何よりです、と返した。お決まりの味噌チャーシューとライスを注文した。
数分後、師匠とたがわぬラーメンが目の前に現れた。とても美味かった。師匠に仕込まれた味をベースに、メニューを広げているようでもあった。それと、よく繁盛していた。他人事ながら、とても安心したし、そして嬉しかった。明らかに地元に愛されている店だった。帰り際、店前で、いまやジュニアさんとは呼べない名店の店主と写真を撮った。
先日、札幌に戻り、報告がてらラーメン屋さんに行ってきた。おかみさんに報告し、写真を見せると、ことのほか喜んでくれた。忙しい店主にも後で見せたいからと、写真を引き取って厨房の冷蔵庫に貼った。
おかみさんの言動から、巣立っていった愛する子供を今も応援している親の気持ちが垣間見れた。
ちょっとしたメッセンジャー気分。
悪いもんじゃない。