5年前の話を。
私が住む北のマチの一角で、
黒色の雑種の子犬が、「もうダメだ」って表情でうずくまっていた。
暑さのせいか、かなり衰弱している。
しばらく様子を見ていたが、飼い主はいっこうに現れない。
周囲を見渡しても、介助に積極的な人は誰もいない。
逡巡したが、成り行き上やむを得ず、私が子犬を連れて帰り、一時保護することになった。
けど、このままでは私が「人さらい」ならぬ「犬さらい」の冤罪を着せられ引き取っても、結局一時的なもので、子犬の面倒を生涯みてあげられる訳ではない。うまく手立てを考えないと、私の行為は保健所に連れて行くまでの時間稼ぎにしかならないのだ。
ところが、「もう俺、このまま飼っちゃうかも」とも思い始めた矢先、
子犬を飼いたい、と見ず知らずのオバちゃんが交番に申し出て、めでたく即日引き取っていった。いいことだけど、唐突過ぎるあっけない幕切れだった。
元気に暮らすんだぞ、名もなき子犬よ・・・
それにしても短い飼い主ライフだったなあ、俺よ。
・・・そんなちょっとぼんやりした暑い夏の日だった。
話は飛んで、
それから2年後の話。
私はちょっとした用事で、同僚Aの運転するクルマで彼の奥さんの実家に行った。そこは典型的な田舎の農家で、母屋があって、奥には納屋があって、倉庫みたいなものもあって、それ以外にもいくつか建物が立っていた。
それぞれの建物の屋根をつなぐように、カーテンリールの化け物ような金属が豪快に走っていて、そこから地上に向けて一本のワイヤーが伸びている。ワイヤーの先には、リードで結ばれた一匹の犬がいる。はじめてみる光景なのでよくわからないが、要はリールが伸びている範囲は、すべて犬の行き来できる範囲ということなのだろう。田舎ならではの広く贅沢な犬環境だ。そうしてる間に、奥の納屋からシャーッと金属のこすれる音を響かせて、犬がトットコ走ってこちらにやってきた。
随分と人懐っこい犬で、私もムツゴロウ氏ばりにジャレて遊ぶ。Aは不思議そうにみていたが、特に犬に近づく様子はない。犬も彼には近づかない。それでも犬は私にジャレてくる。用事を済ませ、クルマに乗り込む時にまで、犬は駆け寄ってきて、勢いよく尻尾を振っていた。
車中でAが
「あの犬があんなに初対面の人にジャレるなんて見たことないです。俺なんていつも吠えられるんですけど」と納得いかん、といった風情で言った。普段はけっこう警戒心の強い犬らしい。「義母が2年位前にどこかで貰ってきた犬なんですけどね」
「貰ってきた犬?」
「貰ってきた犬・・」
「2年前?」
「2年前・・」
・・・・みなさんご想像のとおり、
5年前の黒色の雑種の小犬が、その犬でした。
ずいぶんと大きくなり、健康に暮らしていました。3年後(ややこしいな)の今も健在です。
けど、ホントに私のことを覚えていたのでしょうか?
覚えていたのなら、ちょっとした美談ですな。
なお、先日、
同僚の嫁が産気づいた
http://smilebabyohbaby.blogspot.jp/2014/08/blog-post_6.html
と書きましたが、激闘の末、無事に産まれたそうです。母子同一の誕生日とはなりませんでしたが、ともに元気とのこと。
また、併せて書きますと、現在奥さんは、くだんの犬がいる実家で、静養中。
省いて書きますが、世の中、狭いです。
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